『神の子どもたちはみな踊る』(村上春樹)-0050


ネットでよく言われる「村上春樹風」と呼ばれる文体は、基本的に過去のものだ。彼の文体は、きちんと変化(あるいは進化)している。

2000年に発売になったこの作品を読んでも、それはわかるだろう。いくつか村上春樹っぽい部分もあるが、そうではない部分もある。そういう部分を見過ごしていては、彼のほんとうのすごさはわからないのではないか、とすら感じてしまう。

本作は短編集であり、今日という日付で紹介する意味がある作品集でもある。でも、それがそのような意味があるのかは実際に読んでもらうしかない。

作品の中では、カエルくんが非常に目に付くが、ともかく『蜂蜜パイ』が素晴らしい。彼のこれまでの作品とは少し色合いのことなる前向きのベクトルが感じられる作品だ。じん、と胸に染みてくる。

今の我々も、そういうベクトルを持った新しい物語が必要なのだろう。

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)
神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)