『小説作法』(スティーブン・キング) -0031


文章を書くことについて、特に小説を書くことについて何か本を挙げろと言われたら、真っ先にこの本が思い浮かぶ。村上春樹さんの『走ることについて語るときに僕の語ること』も思い浮かぶのだが、そちらは技術的な話が案外少ないのだ。

私は本書を何度も読み、ごくシンプルな二つの方針を学んだ。

一つは、無駄な言葉を省くこと。
もう一つは、ドアを閉じて書き、ドラを開けて書き直すこと。

私が優れた物書きであるかは別として、この方針を常に意識してきたことだけは間違いない。もちろん、意識したからといって確実に実践できるわけではないが、方向性みたいなものは生まれてくるだろう。とりあえずは、それで満足するしかない。

本書に収められた、「文章とは何か?」という短い文章は非常にインパクトがあった。なにせ書き出しが、「もちろん、テレパシーである」だ。そう、それはたしかにテレパシーなのだ。そのことのすばらしさを、そして恐ろしさを書き手は意識しなければいけない。