『働くということ』(日本経済新聞社=編)-0056
「生きるために働く必要がなくなった時、人は人生の目的を真剣に考えなければならなくなる」
経済学者ケインズの言葉として紹介されている。
本書は、さまざまな働き方をする人たちをインタビューした一冊だ。著名人とはほど遠い、ごく「一般」の人たち。
でも、それは古い価値観における「普通」の人たちではないかもしれない。働くと言うことについて、生きるということについて苦悩を抱える人たちだ。
きっと敗戦直後の日本では「人生の目的」を考えている余裕などなかったのだろう。そして、その問いとの向き合い方を知らないままに、時計の針が進んでしまった。
現代ではいろいろな働き方・生き方が選べる。選ばなければならない。文化という前例に倣っても、誰も自分の人生に責任を取ってはくれない。
「働くとは何か?」
という問いに、自分で答えを出さなければならないのだ。そして、自分でその答えを採点しなければならない。厄介だ。非常に厄介だ。
でも、生きるということは、そういう厄介さをえいやっと背負い込むことでもあるに違いない。