[MM]量子怪盗 (ハヤカワ文庫 SF ラ 7-1)-0009

量子怪盗 (ハヤカワ文庫 SF ラ 7-1)
ハンヌ・ライアニエミ
早川書房 (2014-03-20)
ISBN:9784150119515
1,113円
購入:2014年03月31日 1,113円
読了:2014年08月18日

圧倒的な情報量に押しつぶされそうになる。

用語解説には

ガジェットとジャーゴンの洪水で読者を眩惑し、あえて説明をしないことでめくるめく感覚を醸しだす手法において、現代SFの最先端をいくのがライアニエミだ。

とある。

で、実際この通りだ。

とにかく読者は置き去りにされる。用語が何を指しているのか、まったくピンとこない。でも、物語がドライブしていくので、そこに乗っかる形で、よくわからないままに読み進んでいく。

中盤辺りから、なんとなく世界観が掴めるが、最後の最後まで捕まえ切れた感覚は得られなかった。でも、それが次作を読みたい気持ちを駆り立てる。

ストーリーライン自体は、それほど突飛ではない。二人の主人公的視点が入れ替わるような形で物語が進んでいくコンセプト。そして、それらが途中で交わる手法は、珍しくはない。
ただ、あまりにも世界観がふわふわした状態で話を読んでいたので、物語の仕掛けに気がつくのがずいぶんと遅れた。ある程度、手がかりはあったはずなのだが。

なにはともあれ、一歩間違うとひどい作品になるはずだが、それを見事なバランスで成立させている。おそらく、ストーリーラインが複雑すぎたら、破綻していただろう。

こういう書き方もあるのか、と引き出しが増えたような一冊だった。