『リアル 30's』(毎日新聞「リアル 30's」取材班)-0058
リアルの乖離。
本書が提示するものはそれだ。そして、それはややこしい問題を生む。
「リアル」な感覚が乖離すれば、他者からの理解も協力も得られない。あげく、非難されてしまうこともある。イマジネーションの及ばないところには、同情の芽も生えない。
生き方が多様化しているにもかかわらず、あるいはそれであるがゆえに発生する「生きづらさ」。本来それは同世代的な問題として展開されていくものだが、そこにリアルの乖離が絡むことによって、あくまで個別の問題として落ち着いてしまう。そこから半歩でも足を進めば、もう自己責任という言説が顔を見せる。そうなれば、議論は姿を消すだろう。
明らかに若者には厳しい時代ではあるが、中にはそんなに厳しくない若者もいる。そういうタイプがもし言説の主導権を握ってしまったら……と想像するのは、やはり怖いものである。
世の中にあるさまざまな「リアル」に触れておくことは、やはり大切であろう。